ふぐの季節

    2013/11/25


  待望のふぐのシーズンがやってくる。

 若い頃は正直なところ、「ふぐなんてどこがうまいんだろう」と思っていたが、じんわりとにじみ出るエキスのうまさがようやくわかってきた。

 だが、ふぐほど、そのうまさに諸説が分かれる魚はない。

 新橋の名店「京味」のすぐ近くに、知る人ぞ知る紹介制の日本料理「里味」がある。主人が作る料理は絶品としかいいようがないが、はじめて訪れたとき、たしか十月だったと思うが、刺身にふぐが出て、「今シーズンはこれで終わりです」と言われた。

 聞き間違いかと思って「ふぐってこれからでしょう」と尋ねると、「白子がうまい季節と刺身がうまい季節が一緒ってわけはないでしょう」ときっぱり。
その後、さまざまな文献を紐解くと、ふぐが夏にあまり食べられないのは、かつては西から東への流通が発達していなかったためだとわかった。

 つまり西で取れることの多いふぐは、かつては鮮度がいい状態で東京に運ぶことはできなかったため、「ふぐは冬」ということになったのだが、いまはそんなことは関係ない。
ならば、「刺身は夏」という文献があることからも、ふぐ=冬説にはきちんとした検証が必要だろう。

 大きさに関しても、西と東では違う。東京では1〜2キロ程度のものが好まれるが、関西では2キロ超え、なかには5キロという大物がうまいといわれている。

 東京の食通は、「大きいふぐは大味ですからねえ。やはり程よい大きさじゃないと」という人が多いが、私の経験からいってそんなに違いを感じたことはない。
実は東京っ子だからこそ、私は大きいふぐのほうが好きだ。

 というのも、東京では2キロ超のふぐは需要が少ないから、比較的リーズナブルに手に入るのである。
だから親しい日本料理店(もちろんふぐ調理師免許を持っていることが必須だが)に頼んで2キロ超えのふぐが手に入ったときに声をかけてもらうのが、ふぐを旨く、安く食べる一番の方法だろう。
実際、私は昨シーズンに寿司割烹「西麻布いしい」で7人で11キロのふぐ食べつくし会を行い、大満足の一夜だった。通常は1キロちょっとのふぐを三人で食べるわけだから、この日はひとり5人分を平らげた計算となる。

 ついでにいえば、ちょっと前に芸能人知事だった人が食べて事件になったふぐ肝だが、やはりこれは味が濃厚で旨い。
大分県には食べさせてくれる店がまだいくつもあるが、さすがに東京は少なくなった。
が、まだないことはない、とだけ言っておこう。

東京いい店うまい店編集長
柏原光太郎

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