ステーキの焼き加減

    2013/11/26


  築地本願寺の裏手にひっそりと、ステーキの店、「築地藤田」がオープンしたのは一年ほど前だった。

 オーナーシェフの藤田さんはフランス料理を修業したのちに、八重洲にある「西洋料理 島」で大島さんの片腕を長く務めて、晴れて独立した。

 島を訪れると、小柄な大島さんと貫禄のある藤田さんがいいコンビで、大島さんの指令を受け、藤田さんがてきぱきと動くさまは絵になっていたが、今度は一国一城の主。
マスメディアに宣伝なんてしなかったから、存在を知る人は少ないが、島の常連をはじめとしていい客筋をつかんでいる。
こういう店こそ長く付き合いたいと思わせる。

 開店当初は肩に力が入っていたが、先日うかがったときはずいぶんリラックスし、料理にも遊びが見られるようになってきた。

 先日カウンターに遊びに行ったときは、おかませで牛のたたきや鮮魚のマリネ、コロッケなどを食べてからステーキへ。

 島と同じような大きな特製ステーキ窯に串に刺した牛ヒレ300グラムを入れて15分ほどできれいなミディアムレアのステーキが誕生。
最後は備長炭の鉄網にのせてきれいな焼き色をつけたら完成だ。

「最後の炭火の行程が島と違いますね」と話しかけたら、「実はステーキ窯の中身も島とは違うんですよ」と藤田さん。

 島は炭を下に敷いて、電気と両方をつかってじっくり火を通すが、藤田さんは試行錯誤の結果、電熱をつかった窯で中まで加熱してから炭火でフィニッシュするやりかたに落ちついたという。

 藤田さんが包丁を入れると中はきれいなロゼの状態。しっかり加熱されながらジューシーな味だ。
行程は違っても島のDNAを受け継いだ新しい藤田ステーキの完成といえる。

「ステーキは味見が出来ないから、僕らはきちんと焼けたかどうか指でしか感触がわからないんですよ」と笑うが、素晴らしい火入れと味だった。

 その感覚が正しいかどうかを確かめたくて、翌週さっそく「西洋料理 島」に出かけた。大島さんの下にいるのは若いスタッフが多いが、シェフの指揮下で出される料理に狂いはない。
最後のステーキはやはり、特製窯で焼かれたヒレ。
ひさしぶりに食べた島のステーキは、やはり島の味だったが、同時に藤田のステーキと同じ共通性を感じた。

 いまやステーキの焼き方にかつてのような公式はない。
だからころ、その店独自のステーキにファンがつくのだが、藤田さんの島を発展させたオリジナルのステーキが食いしんぼうに支持されるのは、もう時間の問題だろう。

東京いい店うまい店編集長
柏原光太郎

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