雅珠香(あすか)

雅珠香(あすか)
1級フードアナリスト、外食文化研究家

高ウマ

引きの美学の究極を目指した日本料理。

片折(カタオリ) 石川県

割烹

キュレーターコメント

最初に言っておくと玄人向けのお店です。 金沢では通称“女川”と呼ばれる浅野川沿いに2018年5月に暖簾をあげた日本料理店で、場所は卯辰山に続く天神橋のたもと。雑踏のない静かな雰囲気が漂います。同店店主の片折卓矢さんと女将の裕美さんは、お二人とも懐石つる幸さんのご出身。女将さんもつる幸時代は調理場にいらっしゃいましたから、気配りの細やかさはもちろん料理解説もピカイチです。つる幸の後は、玉泉邸さんのオープン(2014年4月1日)から3年半強、料理長と女将を務められ、ミシュランガイドでは1つ星も獲得されました。そこから独立出店されたのがこのお店です。 さてお料理ですが、修行先のつる幸さんとは真逆な感じですし玉泉邸の頃ともまた違うので、片折さんの事を元々ご存知の方のほうが今のスタイルに戸惑われるかもしれません。“日本の美”、“日本料理の美”の中でも“引きの美学”という部分の究極だと思います。見た目に派手さは無いけれど、シンプルの奥に宇宙を見せてくれる料理。“単味”を立ててありますね。好みは分かれるはず。それもまた良きかな。なんと、店主自ら毎日能登や氷見を回って、魚、野菜、水などの食材を調達しています。頭が下がります。最初はこのスタイルに迷いもあったそうですが、自分スタイルをとことん貫いてほしい!に一票。大将もどんどん意気揚々とされていて、自分スタイルを掴みきったのではないでしょうか。 10月の能登松茸の会なんて最高でした。 能登の松茸名人さんが採ってきた松茸が山になっており、思わず拝みたくなるような神々しさ。山になっている松茸の手前にはスッと伸びた白マツタケも一本。中も純白で眩しいくらいだった。ちなみに今回は食材だけでなく、店主もスコーーーンと突き抜けていて、一線を画した素晴らしい回でした。(ただ、松茸は自然のものなので入手できない日もありますから、前日のお客さんには松茸は提供できなかったそうです。地物の良いものにこだわっているだけに、毎日納得するものを仕入れるというのは、相当な緊張感があるでしょうね。) まず最初の一品は松茸のお粥から。提供されてすぐ食べてほしいとのことで、後の方を待たずに頂きます。薄くスライスした松茸を軽ぅく火入れしお粥に合わせて。塩は引くに引いて、五感をすり抜けそうな淡さ。そこから時間差で立ち上がってくる、優しい甘さに胃袋を撫でられてスタート。 お次は黄金蟹の真薯のお吸い物が登場。かと思いきや、こちらもつなぎは引くに引いてほぼ黄金蟹を寄せたものでとても繊細なものでした。お弟子さんがお一人いらっしゃって、目の前で丁寧に鰹節をひいてくれます。薄ーく削ったしなやかな鰹節はやはり格別の風味。この鰹節も特注で作ってもらっているものなので、ここでしか味わうことができません。とても印象に残ります。能登の“藤の瀬の霊水”で40時間水出しした昆布に合わせて。昆布は利尻まで足を運ばれて一等品を確保されたそうです。このベースの昆布出汁のたおやかさに、黄金蟹の絹のようなとろんと滑らかな舌触りが合わさってそのまま喉へ滑っていく。目を閉じて浸った。大きな松茸も嬉しい。お造りはキジハタ(ナメラ)にアオリイカ。もちもちとしたキジハタの美味しいこと。けんは大根ではなく、生のマツタケを1寸の針にしたもの。そして、“何か”がふんわりと包まれた大きなホイルが人数分登場し、目の前の七輪にのる。しばらくして火から外されて登場したのはこちらも松茸。松茸はそのまま炭火焼きにするとたしかに香ばしく美味しいが旨味が落ちる。こうやって“ジュ”まで味わい尽くすとなるとホイル焼きが一番だ。シャクシャクとして歯ごたえも美味。なるほどなるほど。松茸づくしの流れにここで牛が登場。能登牛ではなく、店主の故郷の氷見牛で、湧き水と酵母を加えた飼料で育てられているそうで、こんなピュアな味わいの牛は食べたことがないってくらいピュアで驚き。シルクの舌触り。干ぜんまいと湯涌の胡桃の白和え。ほのあたたかい胡桃の口当たりの心地よいこと。優しく寄り添う野趣がまた良い味となる。なんとなく懐かしさも湧き上がる、思い出まで味付けにした一品。すっぽんのスープはすっぽんの存在はないのに、すっぽんが堂々と存在感を表した豊かな美味しさ。揚げ物は、カマスの天ぷらに天然ナメコのあんがけ。さらに松茸を散らして。お食事は氷見のコシヒカリ。自家製イクラをのせて。膜の柔らかさも絶妙で皆おかわり。誰かが言い出した「これが究極のたまごかけご飯だねぇ」という一言に「なんて贅沢な」と笑いがこらえきれない。また、最後の棒茶も目の前で煎ってくれましたが、こういう演出いいですね。和の香りって、やはり日本人としてのDNAがそわそわします。菓子は本物のわらびもち。最初から最後まで本物で通してくれるのはやはりここの価値。八尾のきなこがけにしたものを目の前のまな板で切って。もちもちとかみずみずしいとか、そういうのはなんかもう野暮な表現で、自分の細胞にスッと寄り添ってくれそうなデリケートさ、奥深い妙味に感謝すら覚えた。 素材の骨格を出すには塩が必要だが、ギリギリまで引いたところに見えてくる景色もあることを教えてもらった。 片折さんはこのまま「どこまでいっちゃうんだろう」と期待させてくれる、予感させてくれるからだろう、既に何度も通っている人が結構いる。私も秋冬で3回の訪問。 12月の蟹の会も素晴らしかった。

店舗情報

片折(カタオリ)

割烹 石川県金沢市並木町3-36
平均予算

¥30,000~

営業時間

[水・日] 12:00-14:30 [月-日] 17:00-19:30 20:00-22:30(2部制) *2部制 *松茸の時期は19:00-の1回のみ

定休日 不定休
ウェブサイト http://bit.ly/2CJf7au
リンク http://bit.ly/2Hw3jxW
Facebookページ http://bit.ly/2Sa2or3
電話番号 0762551446
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